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あべひろ総合歯科

東京歯科大学 大学院卒、博士号を
取得した歯科医師のいる歯科医院

キシリトールって何だろう?

埼玉県三郷市のあべひろ総合歯科、認定歯科衛生士の尾澤友梨です。

「キシリトール」という言葉は、むし歯予防の製品としてご存知の方が多いのではないでしょうか。主にガムに配合されている成分ですが、最近はガム以外のタブレットや歯磨剤にも含有されるようになってきました。今日はこの「キシリトール」についてお話したいと思います。

Q. そもそも、キシリトールってどんなもの?
A. 天然素材の甘味料です

キシリトールは、元々は野菜や果物の中に含まれているもので、天然素材の甘味料です。みなさんが口にするものの多くは、樹木である白樺に含まれている『キシランヘミセルロース』という成分から、『糖アルコール』という、一種の炭水化物を作ってそれを使っています。

私たちの身近なところでは、いちごやレタス、ホウレンソウといった野菜や果物の中にも含まれています。


 

また、体内でも肝臓で1日に5~15g産生されています。砂糖と比べてカロリーは25%も低いのに、糖度は変わりません。溶ける時に熱を吸収するため、独特の清涼感があるのも特徴の一つです。

では、キシリトールについて話を進めていく前に、まずはどうしてむし歯になるのかをお話ししましょう。

どうしてむし歯になるの?

そもそも、むし歯とは、むし歯菌が酸を作り、その酸によって歯が溶けることです。むし歯菌は『ミュータンスレンサ球菌』という菌と、『ラクトバシラス菌』というものが主な細菌の種類です。この二つの細菌種が酸を作って歯を溶かすのですが、『ミュータンスレンサ球菌』は歯にぴったりくっついて、糖を栄養にして作り出した酸で歯を溶かしていきます。一方、『ラクトバシラス菌』は、穴が空いたむし歯の中や、歯に合っていない詰め物の間や段差に潜んで、そこで酸を出してむし歯を大きくしていきます。どちらの菌も酸に強いので、強い酸を出しても細菌自身はやられません。歯だけをどんどん溶かし、むし歯を進行させていく厄介な菌です。

これらの菌は『常在菌』と呼ばれる菌で、お口の中に常にいるものなので、お口の中の健康を保つバランスが取れている時には細菌が酸を作り出しても、唾液の持つ『再石灰化』という作用で歯が溶けるのを防ぐことができます。しかし、頻繁に炭水化物を摂取すると、お口の中が酸性になる時間が長くなり、酸に強い細菌が活発に活動するようになります。加えて、歯が十分に磨けていないと、細菌はますます元気に活動するようになります。こうなると、もはや唾液の力だけでは太刀打ちできません。その結果、お口の中の環境のバランスが崩れ、歯が溶けてむし歯になっていくのです。

炭水化物の摂取頻度が多くなると、これらの細菌は増殖します。この摂取とは『量』ではなく『頻度・回数』ということに注目してください。作業の合間にアメをなめる、お砂糖が入ったコーヒーやミルクティーを仕事の合間に一口飲む、差し入れにもらったドーナツやクッキーをちょっと一口・・・。こんな毎日のちょこちょこ食べ&ちょこちょこ飲みの積み重ねが、むし歯菌の増殖に一役買っているのです。「甘いものを食べ過ぎないように!」と歯医者さんで言われる一言には、「甘いものをたくさん食べてはいけない」という意味ではなく、「回数多く食べてはいけません」という意味合いがあるのです(もちろん、健康面を考えたら甘いものを量多く食べるのもよくありませんよ!)。

では、本題、キシリトールがどうしてむし歯予防に効果的なのか、お話ししていきましょう。

キシリトールはミュータンスレンサ球菌に対してとても効果的と言われています。糖分が、むし歯菌の栄養になって、酸を作ったり、歯にしっかりくっついたりする力になるのに対し、キシリトールは細菌の栄養にならないという特徴があります。そのメカニズムを詳しくお話しするのは、難しい話になってしまうので省略しますが、栄養にならなくても、むし歯菌はキシリトールを栄養分だと思って他の糖分と同じように自分の中に取り込みます。しかし、取り込んでも、酸を作り出せないばかりか、逆にエネルギーを消費して、歯にくっつく力が弱くなってしまうのです。食べるけど栄養にならず、お腹が空いて、疲れてぐったりしてしまう、という状態になるのです。むし歯菌がぐったりして酸を作り出せないと、酸によって歯が溶けることが少なくなり、結果としてむし歯になりにくくなる、ということになるのです。キシリトールにはこのようなむし歯抑制のメカニズムがあることが解明されています。


 



キシリトールが含有されている製品の代表といえば、キシリトールガムです。現在は様々なキシリトール製品があり、ガム以外にも、タブレットや歯磨剤などにも応用されています。どの製品を使っても、キシリトールのむし歯抑制メカニズムは変わりません。



初期のむし歯で、歯の表面が溶けただけでまだ削る治療は必要ない、といった場合は、この再石灰化を促進することでむし歯の進行を抑えることができます。患者さんに、「ガムとタブレット、どっちがいいですが?」と聞かれることがあります。どちらでも構いませんが、人により好みもありますし、患者さんのお口に中の状態によっても変わってくると思います。

歯の根っこの治療をして神経を抜いてしまっている方で、噛む力が強い方の中には、その力によって稀に歯が割れてしまうことがあります。歯の神経は歯全体に栄養を与えています。神経の治療をして、長い年月が経つと、栄養が十分歯に行き渡らず、歯が枯れ木のようになり、そこに強い力が継続的に加わると歯が割れる、ということが起こります。神経の治療をした全ての人がそうなるわけではありませんが、以前にも噛む力で歯が割れた、という既往歴がある方には、私はガムよりもタブレットをお勧めしています。タブレットも、口に入れてすぐに噛み砕いては意味がありませんのでご注意を。お口の中でころがしながら、ゆっくり溶かすことで、唾液の再石灰化作用が期待できます。

キシリトール自体に再石灰化作用があるわけではないので、キシリトールを使って再石灰化を狙うのであれば、ガムを噛んだり、タブレットをなめたりして、唾液機能を増強させることが必要です。摂取方法によって、再石灰化作用への期待は変わってくる、ということですね。キシリトールは薬ではないので、いつまで摂ったらいいの?という期限はありません。しかし、一度にたくさん摂取しすぎると、お腹が緩くなってしまうことがあるので、注意が必要です。味がなくなったからといって、次々とガムをお口に放り込み、気づいたら1日にガムのボトル1箱丸々食べてしまった!なんてことは良くありません。適量を摂り続けると、先ほどいったような効果でむし歯菌の働きを抑えることができます。効果を期待したいのであれば、毎食後摂る、というように、摂取する時を決め、生活のリズムに合わせて摂り続けると良いとい思います。キシリトールを摂取している患者さんを見てきた経験からみると、これはあくまで私の個人的な感想ですが、キシリトールを継続的に摂取し続けている方のプラーク(歯垢)はサラリとしていて、歯のクリーニングをした時に比較的取りやすいと感じています。他にも甘味摂取を見直したり、抗菌作用のある歯磨剤を使ったりということも併用しているので、キシリトールだけの作用とは言えませんが、キシリトールの摂取もむし歯菌の力を弱める手助けをしてくれるので、患者さんにお勧めしています。

また、番外編として、キシリトール以外の再石灰化を促進するための製品も最近は販売されているので、ここでご紹介します。

①POs-Ca(リン酸化オリゴ糖カルシウム)


カルシウムイオンを効率的に唾液中に供給することができるので、歯にカルシウムが戻ることを助けてくれます。


②CPP-ACP(リカルデント)


CPPとは牛乳由来のタンパク質の分解物です。これもまた、歯にカルシウムやリン酸を戻すことを助けてくれるので、再石灰化の促進になります。この製品で気をつけて欲しいことは、牛乳由来の成分が入っているため、牛乳や乳製品に対するアレルギーがある方は使用できないということです。

この二つも再石灰化を助ける製品としてお勧めです。


さて、ここまでキシリトールについてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。キシリトールはむし歯菌が酸を作り出すことを抑えることができるので、むし歯予防に効果があるのです。気をつけて欲しいのは、『キシリトールだけ摂り続けても、むし歯予防にはならない』ということです。むし歯は多因子性疾患といって、たくさんの原因が重なって起こる病気です。キシリトールを摂ることでむし歯菌の力が弱まる手助けができても、それでもむし歯ができることはあります。キシリトールを使ってのむし歯菌へのアプローチは、一つの方法に過ぎません。『じゃあ、摂っても摂らなくても一緒じゃないか』と思うかもしれません。しかし、様々な原因からむし歯になるのであれば、私たちも様々な方法で敵に立ち向かう必要があると思いませんか? そのための一つの方法がキシリトールなのです。

歯を磨く、食生活を見直す、抗菌作用のある歯磨き粉を使う、定期的に歯のクリーニングをする・・・。むし歯に対抗する様々な『方法』という武器を持って、むし歯にならないお口の中を目指していけるといいですね。

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